本学院中高進路指導部では、生徒が様々な学問分野への見識を広げられるよう学外から専門の講師の方をお招きして在校生を対象にキャリアアップ講座を開講しています。
今回は、言語学への学びを深められるよう、4月28日(火)に明治学院大学の平岩健先生をお招きして「言語のハードプロブレム」というテーマで講座を開催しました。中・高の希望生徒が集まった会場では、21世紀のことばの科学が挑む「なぜヒトだけが自然言語を持つのか」、「AIにヒトのことばは理解できるのか」といった深遠な問いを軸に、熱い授業が展開されました。
言語の本質と「ユニバーサルグラマー」
平岩先生は、ヒトの言語の本質を「有限の単語から無限の文を作れること」、「その意味・解釈を共有できること」にあると示されました。 例えば「頭が赤い魚を食べている猫」というフレーズ。 AIでは2通りの解釈に留まるのに対し、人間は文脈から5通りもの意味を読み取ることができるといいます。また、子どもがわずか5歳までに複雑な言語体系を習得してしまう謎についても触れ、平岩先生の師であるチョムスキーが提唱した「ヒトには生まれながらにして言語能力(UniversalGrammar:普遍文法)が備わっている」という理論を分かりやすく解説してくださいました。
言語は「思考の道具」として進化した?
興味深かったのは、言語の起源に関するお話です。 私たちは言葉を「コミュニケーションの道具」と思いがちですが、平岩先生は「完璧に意図を伝えるシステムとしては不完全である」と疑問を呈されました。 むしろ、言語はまず「思考の手段」として進化したのではないか、という新しい視点を示されます。生徒たちは深く聞き入っていました。
AIとの違いと、学びへの姿勢
急速に進化するAIについても、ヒトとの学習プロセスの違いを指摘されました。 AIが真に言葉を理解するには、まだ解明されていない人間特有の言語能力の理解が不可欠であると説かれました。 最後に、学問に向き合う姿勢として「思い込みを捨て、思いつきを拾う」ことの大切さを語ってくださいました。
活発な質疑応答と生徒の反応
講義後に、予定を遥かに延長した、30分にわたる質疑応答がされました。「幼少期の多言語学習に弊害はあるか?」「AIは自ら考えるようになるのか?」など、生徒から質問が次々と飛び出しました。 先生はその一つひとつに丁寧に応答してくださり、後日改めて回答を送ってくださるほど、生徒の熱意に応えてくださいました。
以下、参加した生徒たちの感想の一部を紹介します。
• 「言語学に科学としての一面があることを知り、驚きました。」
• 「当たり前を疑う重要性は、他の学問にも通じる大切な姿勢だと思いました。」
• 「『思い込みを捨て、思い付きを拾え』という言葉が心に残りました。」
今回の講座は、言語学という学問の奥深さに触れるだけでなく、将来の進路を考える上でも大きな刺激となったようです。 素晴らしい授業をしてくださった平岩先生に、心より感謝申し上げます。進路指導部では、今後も生徒たちのキャリア形成を支援する、知的探究心を揺さぶる企画を継続していきます。