本学院中学校では、東邦大学大学院理学研究科との連携講座S.P.P.(サイエンス・パートナーシップ・プログラム)に参加する機会に恵まれ,10月27日(月)中学校3年1組[32名]が東邦大学(習志野キャンパス)におじゃましました。iPS細胞など再生医療の救世主として今話題の「多能性細胞」について学び,実際にそれを染色・固定したり,ES細胞からのDNAの抽出も行いました。当日、講座を担当していただいたのは,同大学理学部生物分子科学科・分子医学部門生命機能医科学研究室 准教授柳内和幸先生です。先生には中学生の学習レベルに合わせて噛み砕いた内容の講義を準備していただいたり、研究室の学生さんを実験グループの各テーブルに配置して中学生でも安全で正しい操作ができるよう配慮いただきました。ありがとうございました。
下記に当日の模様を紹介させていただきます。
〈講座1〉 分子生物学を学ぶための基礎知識 遺伝子操作の基礎技術 生命科学の医学への応用
〈実験〉 ES細胞のAP染色 ES細胞からのDNA抽出実験
本日の大成果、染色されたES細胞と抽出されたDNA
〈講座2〉 生命科学と社会とのつながり
このプログラムは本来高校生向けのものですが,特別に今回は本学院中3生徒を対象に実施してもらいました。数週間前からの入念な準備のもとで,高価な実験器具や実験材料(特に貴重なマウスのES細胞)を使わせていただきました。また実験終了後に行った講座では,最新の科学が私たちの生活とどのように関わっているのか、倫理的な問題も含めてご教示いただきました。また、柳内先生は講義の中でご自身の経験談をまじえてキャリア教育に関わる職業選択についてもお話し下さいました。
次に当日参加した生徒の感想の一部を紹介します。
「今回このような機会をいただき,とても満足しています。SPPで使用したDNA(マウス)とES細胞について,生涯体験ができないようなことをやらせていただきました。今回の実験は命をいただいて行うということで,とても自分たちからみたら悲しいことですが、動物の大切な命を頂いてということで感謝の気持ちを込めて一生懸命、取り組みました。」
「染色実験で使ったES細胞は培養するのに2週間もかかると聞き,本当にすごい体験ができたのだと思いました。」
「今回のSPPの体験は,私にとってとても良い経験になりました。元々理科は好きな教科でしたが,最近遺伝を勉強する単元になり,内容もどんどん難しくなってきました。「分かること」が楽しかった私は,分からなくなるにつれてあまり好きではなくなっていました。分からなくなって,授業もつまらなくなっていました。(中略)でも今回,柳内先生にES細胞のことや今の科学がどこまで進歩しているかなど,おもしろく楽しく、また分かりやすく教えていただき,頑張ろうと思い始めました。(中略)また柳内先生の昔の話を聞いて,努力すれば何でもできるのかなと思ったので,これからは今までよりもたくさん努力して,理科も何もかも頑張りたいと思いました。」
「今回色々なことを聞いて,こんなに技術が発達していることを知って,正直驚いてとまどいました。「できるけれどやってはいけないこと」がたくさんあって,もし誰かが興味本位でやってしまって実現してしまったら…ということを考えたら,科学って,やっていいことと,やってはいけないことの区別など,研究するだけではなく,見極めて必要なことを研究していかなければならない。大変なことだなと思いました。」
「小さな細胞が私たちの命までを助けるぐらい大きな働きをするということがすごいと思いました。また再生医療がどこまで進歩して良いのかという問題は,私たちが大人になったときにもっと問題となっていると思うので,科学の進歩は怖いなとも思いました。」
「大学では自分の学びたいことを学べるという,中高とは違う学び方なのですごく楽しそうでした。色々な大学に行ってみたくなりました。」
「柳内先生がES細胞を2週間つきっきりで用意してくれたことを知り,驚きました。またこの実験にはマウスを使っているそうです。ES細胞は受精卵を使うものです。たとえマウスであっても一つの命です。その命を使って実験したことを今後の理科の学習に生かしていきたいです。」
「今回自分たちのために準備をしてくれた柳内先生や,案内・実験の手伝いをしてくださった大学生の方々に感謝の気持ちで一杯です。」
今回のプログラムは本当に貴重な経験になりました。子どもたちは,単に最新の科学技術に対する驚きだけでなく,科学の進歩と生命倫理とのせめぎあいや将来の職業選択など,様々なことに気づくことになりました。これは,学校で使用する教科書の枠に収まらない,その先の未来へ,子どもたちが大きく夢をふくらませる絶好の機会になったと思います。
最後にはなりましたが,今回特別にこのような貴重な機会を与えて下さった東邦大学理学部の柳内先生を始め,多くの関係者の皆さまに厚くお礼申し上げます。